知り過ぎてる私たち

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B「ずっと待ってたのか?」 A「……そんなわけないでしょ」 B「鼻、赤くなってるぞ?」 A「……っ!」 そう言われて、私は顔を隠すように巻いていたマフラーを、更に上げた。 B「ほら、行くぞ」 私の手を取り、彼は歩く。 ……彼は気付いている。彼が来るまでの間、私がずっと此処で待っていた事を。そして、彼もまた、私が彼の考えを知っている事を知っている。 自分の事のように、お互いの事を知っている私たち。互いの心に芽吹く想いも知ってはいるけれど、どちらも一歩を踏み出せずにいる。 言葉にすれば、きっとどちらも断らないだろう。それでも、互いを知り過ぎている私たちには、何だか気恥ずかしくて。 今日もまた、変わらぬ距離を2人で歩く。冷えた手を、互いの温もりであたためながら……。
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