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そう、春音ちゃんに言いたかったけれど、言えなかった。
春音ちゃん、神様冒?する事だけは許さないからなあ。
私は溜息をつき、言った。
「分かった。すりはしない。ただ。」
私は付け加える。
「稲荷寿司を買うための金をください。」
私は春音ちゃんに頭を下げた。
「嫌に決まってるでしょ?」
春音ちゃん、即答。
決まりすぎて、清々しい程である。
はい、はい。
わかってましたよ。
あんたは優しいけど、自分の損になる事は決してしないから。
「わかってたら、いいんです。」
ふわふわとした、花のような笑顔をいっぱいに浮かべる春音ちゃん。
鬼。
いや、その持ってる鈍器を降ろそうか。
すっごく物騒だから。
誰だ。この娘を優しいと言ったのは。
…………。
私は心の中でとっても反省をする。
春音ちゃん。
めっちゃ、物騒だ。
この世界は優しくなんかないのだ。
「火影ちゃん。守銭奴ババアの場所に行きましょう♪」
春音ちゃんは、笑う。
その笑みが、悪魔の笑みに見えたのは私だけだろうか。
あと、守銭奴ババアとは、私達の同僚の一人の事である。
それをカツアゲする気満々の、春音ちゃんなのであった。
「金よこせよ、ゴラァ。」
ドスの効いた声で、守銭奴ババアこと玉ちゃんを、虐めているのは、一番不良になりかけ、( いや、なってんじゃね?)の歩治ちゃん。あ、これはポチと読む。
「嫌よ。金は命よ!」
叫ぶ玉ちゃん。
先に断っておくが、断じて玉ちゃんと歩治ちゃんは、犬猫ではない。
れっきとした狐である。
「稲荷寿司。」
カツアゲされているのを無視して、私は、玉ちゃんに要求した。
「金は?」
玉ちゃんは、歩治ちゃんをスルーして、私に微笑んで尋ねる。
やっぱり、悪魔の笑み。
いや、それ、流行ってるの?
そして私は思う。
私達の同僚は皆、おっかねえ。と。
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