一ノ章

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そう、春音ちゃんに言いたかったけれど、言えなかった。 春音ちゃん、神様冒?する事だけは許さないからなあ。 私は溜息をつき、言った。 「分かった。すりはしない。ただ。」 私は付け加える。 「稲荷寿司を買うための金をください。」 私は春音ちゃんに頭を下げた。 「嫌に決まってるでしょ?」 春音ちゃん、即答。 決まりすぎて、清々しい程である。 はい、はい。 わかってましたよ。 あんたは優しいけど、自分の損になる事は決してしないから。 「わかってたら、いいんです。」 ふわふわとした、花のような笑顔をいっぱいに浮かべる春音ちゃん。 鬼。 いや、その持ってる鈍器を降ろそうか。 すっごく物騒だから。 誰だ。この娘を優しいと言ったのは。 …………。 私は心の中でとっても反省をする。 春音ちゃん。 めっちゃ、物騒だ。 この世界は優しくなんかないのだ。 「火影ちゃん。守銭奴ババアの場所に行きましょう♪」 春音ちゃんは、笑う。 その笑みが、悪魔の笑みに見えたのは私だけだろうか。 あと、守銭奴ババアとは、私達の同僚の一人の事である。 それをカツアゲする気満々の、春音ちゃんなのであった。 「金よこせよ、ゴラァ。」 ドスの効いた声で、守銭奴ババアこと玉ちゃんを、虐めているのは、一番不良になりかけ、( いや、なってんじゃね?)の歩治ちゃん。あ、これはポチと読む。 「嫌よ。金は命よ!」 叫ぶ玉ちゃん。 先に断っておくが、断じて玉ちゃんと歩治ちゃんは、犬猫ではない。 れっきとした狐である。 「稲荷寿司。」 カツアゲされているのを無視して、私は、玉ちゃんに要求した。 「金は?」 玉ちゃんは、歩治ちゃんをスルーして、私に微笑んで尋ねる。 やっぱり、悪魔の笑み。 いや、それ、流行ってるの? そして私は思う。 私達の同僚は皆、おっかねえ。と。
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