一ノ章

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しかも異常に女子力が高い。まあ、俗に言うオネエである。 だからお稲……ではなく、倉稲魂尊様を倉稲魂尊オネエって言うのも、悪くない。 完璧なる思い付き。 倉稲魂尊様は口を開いた。 「あのねえ。これでもアタシ、もててんのよ。」 倉稲魂尊様はお得意のオネエ語で話しまくっている。 ちなみに、倉稲魂尊様は外見、お爺ちゃん。 それが、可愛らしく目をパッチリとしてみせたり、いきなり、告ってきたり、オネエ語で話し始めるのだ。 誰だって怪しく思う。 本人に失礼だが、今の所、百パーセント、告白の返答は「ごめんなさい。」だ。 まあ、それが常人の行動。 咎める者はいないだろう。 だが、倉稲魂尊様の力は計り知れない。 倉稲魂尊様を咎める者がいないのはそれもあるかもしれない。 私の心の声に全く気付いていない様子の倉稲魂尊様。 倉稲魂尊様って心の中で言えば気付かないらしい。 「ねえ、火影ちゃん。なんでいつもアタシの事、倉稲魂尊って呼んでくれないの。」 それは決まり切っている。 理由は一つ。 「いやー。倉稲魂尊ってどっかの嫌がらせにしか過ぎないですよ。難しい早口言葉ですよ。お稲荷でも間違えじゃないんだから、そっちで良いじゃないですか。」 いっきに捲し立てる。 「ちゃんと言えたじゃない。アタシねえ、お稲荷って呼ばれるのが嫌なの。アタシの名前は倉稲魂尊。それ以上でもそれ以下でもないわ。」 ………今、私は返す言葉を持ち合わせていない。
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