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「あー。火影ちゃん?」
倉稲魂尊様の少し引いたような声がする。
「神様の使い様がすりってねぇ。」
呆れたように言う。
「いいんです!」
私は答えた。
全ては稲荷寿司の為に。
さぁて、一人目の鴨は誰だろうか。
誰でもどんとこいって処。
私はやる気満々だった。
だったって言う過去形なのは、後々分かる事である。
私の心の声は叫んでいた。
全然金が手に入らない。
普通、御参りにはお供え物をするのが決まり。
食えない物を供えられたって、私達は弄ぶだけなんだよ。
食える物の方が全然嬉しい。
とんだ誤算だった。
「ねえやめようよ。火影ちゃん。」
私に制しをかけてくる者がいる。
お稲荷様……では無かった、倉稲魂尊様じゃない。
倉稲魂尊様に仕える春音ちゃんだ。
ほんわかとした優し気な少女。
性格は優しい。
ただ歳が、私より二百歳ほど上。
「ね?」
一生懸命なのは分かる。
痛いほど分かる。
だが、此方も一生懸命なのだよ。
「稲荷寿司……。」
私は呟く。
「稲荷寿司稲荷寿司稲荷寿司!」
こう書くと呪文のように見えるが稲荷寿司と三回叫んだだけだ。
「あのね、火影ちゃん。すりは駄目な事なんだよ。」
そう言って春音ちゃんは真剣に此方を見つめた。
怖いよ。
私の正直な感想。
顔は笑っているのに、目は笑ってなくて。
だが、私は反論する。
ただし、心の中で。
すりをやっていけないと、誰が決めたんだ。神かやっぱり神様なのか。その神様出てこい。私が天誅を下してやる。
……あれ、天に天誅するって可笑しい。
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