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「あ、ミルクとかいる?」
「あったら使うけど、なければないで大丈夫、かな?」
本当はブラックコーヒーはあまり好きじゃないけど、先輩をまた階下に行かせるのも悪いのでそう言った。
けれど、渡されたコーヒーをひとくちふたくち飲んだら、
「……苦い」
しかも、無糖だし。
微糖ならよかったのにな。
「ブラック苦手?」
「薄ければ飲めるけど、これはちょっと苦いかも……」
そう言ってまた飲んだら、先輩にグラスを取り上げられた。
「苦い? コレ」
先輩がコーヒーをひとくち飲んでから言う。
「おれはもっと濃いのが好きだけど」
間接キス――なんて。
今さらそんなささいなことで恥ずかしがる仲でもないのに、鼓動が勝手に反応してしまう。
「……先輩は大人なんですよ。おれと違って」
「そっか。千波矢はまだ子供だからミルクが必要なんだ」
完全にからかい口調の先輩に、なんて返せばいいのかわからなくて、
「…そんな子供じゃないですよ」
つい、すねたように言って、俯きがちに横を向いてしまった。
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