第1章

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ーーー今、留学候補者を選考中だよね? 届いたメールを無意識に開くと、私のアドレスでメールが送られてきた。 「ナニコレ?」 それが率直な感想だ。 ウイルスに感染したのかも知れないと不安になった。 ーーー憧れていた留学だけど、乗るはずの飛行機が事故で墜落するの。 ただメールの内容は来春から実施される予定になっていた交換留学の話題で、今はまさにその選考が校内で行われていた。 留学生は校内の成績で一次審査され、その後、面接で決まる。 私は一次審査を通過して、面接を待つ身だった。 「他の候補生の嫌がらせ?」 誰が候補生なのかは分からない。ただ一人だけその人物を知っていた。 「でもまさか」 その人物は、親友だった。それに彼女がそんな事をするとは思いたくない。 聞くに聞けず、私は学校でも彼女といつも通りに接した。 「なんかアユが選ばれる気がする!」 「選ばれたら嬉しいけど、面接って緊張するよね」 どこか内気な所がある私は、社交的で自信に満ちた彼女の表情を羨ましく盗み見ていた。 ーーー負けて良いのよ。だって飛行機に乗れば墜落するんだから。 不審なメールは連日送られてきた。 そのほとんどが1文だった。 それだけに、何度もその文章をくり返し読んだ。 辞退すれば、事故にはあわない。 でも私が辞退すれば、間違いなく彼女が飛行機に乗るだろう。 だったら日時を変えたらいいのかも。 私にしては名案だと思った。 ーーーまだ分かっていないみたいね。 心を見透かされている気がした。 ーーー貴女は三十二歳で結婚する。相手は今のクラスメートの誰かよ。でも誰かは言わない。 「って事は、私は選ばれなかったってこと?」 メールを見てそう思った。 それと同時に、彼女のことが気になった。 ーーー言えるのは飛行機事故は起きたわ。そして、搭乗者の中に生存者はいなかった。痛ましい事故よ。 届いたメールは、彼女の安否には答えてくれなかった。 面接の日、先に面接を終えた彼女が教室から出てきて意外なことを口にした。 「私、留学するの辞退したの」 「エッ、なんで?」 廊下で順番を待っていた私は慌てていた。 立ち去る彼女の背中を見送ると、名前が呼ばれて私は教室のドアに手を掛けた。 あのメールは誰から送られたものだろう。墜落は本当なのだろうか。
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