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この洋館に仏壇も似合わない気がするが、じいちゃんの葬式にはお坊さんが来ていたのだから、当然と言えば当然なのだろう。
俺は、その仏壇の前に正座した。景子叔母から、毎日水を変えて線香を上げることを言いつけられていた。まずその言いつけを守ってから、仏壇の上にかけられた、じいちゃんの遺影を見上げる。
遺影の中で笑うじいちゃんは、俺のよく知るじいちゃんだ。俺とは似ても似つかない、頭のてっぺんがツルリと光り輝く、所謂おじいちゃん、である。じいちゃんの若い頃によく似ている、と言われるが、頭髪だけは似たくないものだ。
大好きなじいちゃんの明るい遺影を見ていると――複雑な感情がよりややこしくなる。
このじいちゃんと、あのエロ魔人があんなことをしていたなんて、孫としては信じたくないじゃないか。
「……じいちゃん、あいつ、じいちゃんの何なんだ?」
じいちゃんに語りかけながら、ふいに口にした言葉が、強い疑念に変わる。
景子叔母は、あのランプはじいちゃんの友達だ、と言っていた。じいちゃんからそう聞いた、と。
けれどジンは、自分をじいちゃんの僕、しかも夜の相手をする僕だとまで言っていた。
俺は、二人は好き合っていたのだと思いたい。
そうでないなら、じいちゃんが主人だっていう関係を利用してジンとああいうことをしていたことになる。
しかしもし二人が恋人同士だったなら、俺がこの世に存在していることが謎だ。じいちゃんはあいつと関係を続けながら、ばあちゃんと結婚したのだろうか。
しかし、それもあり得ない、と思いつく。ジンは昨夜、五十年ぶりのランプの外だと言っていたからだ。
それはつまり、じいちゃんが五十年もジンを呼び出さなかったということで、その間にじいちゃんはばあちゃんと結婚して、母親や景子叔母が生まれ――俺が生まれた。
だがそれなら、なぜじいちゃんはあいつを呼び出さなくなったんだ?
そもそも、どうしてジンは俺と年の変わらない美少年なんだろう? 魔法のランプの精が、青い肌の巨人でもびっくりだが――。
遺影の中で白い入れ歯を見せる大好きなじいちゃんが、見知らぬ老人に見えてくる。
じいちゃんの秘密。
ジンの謎。
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