マジック02 恋の十字架

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 ジンは俺を睨んだまま、答えなかった。  きつい視線で睨まれているのに、俺はちっともジンが怖くなかった。 「ひでぇ……」  ジンが、とても悲しそうだったからだ。 「そんなの、ひでぇよ。自分の気持ちが報われないからって、ジンを仁さんの身代わりにしたってことだろう?」  じいちゃんがどれだけ寂しかったか、どれほど仁さんを恋しがったか、俺には想像もできない。  それでも、誰かを誰かの代わりに愛するなんて、残酷な仕打ちだと思った。  俺を睨むジンの瞳が、潤んだように見えた。 「本当に、光也にはガッカリさせられるよ。お前は顔と体以外は、光雄とまったく似ていなっ……」  強がる顔を見ていられなくて、憎らしい台詞を聞きたくなくて、掴んだジンの腕を引き寄せ胸の中に隠した。 「そうだよ! 俺はじいちゃんじゃない!」  思わず突いて出た言葉に、俺自身も愕然とする。  そして腕の中のジンも、脱力してダラリと両腕を垂らした。 「……ふふ。本当に光也は……」  俺は許可も得ず、ジンにキスした。  ジンにガッカリされたくなかった。  俺がじいちゃんじゃないから、と。  覚えたてのキスを、教えた張本人にそっくり返す。  ジンがじいちゃんを思い出す暇がないよう、一ミリも唇をずらさず激しく口づける。 「……んんん……」  ジンは苦しそうに喘ぎながら、それでもまったく抵抗しなかった。  全てを諦めたかのように身を投げ出すジンが、切なくて悲しくて、胸が痛くてどうしようもなかった。  苦しさに喘ぎ唇を離すと、さっきよりもっと潤んだジンの瞳と出会った。 「俺は、じいちゃんじゃないからな……」  もう一回、念を押す。  どうしてこんなにムキになっているのか。  目の前にジンがいて、ジンと体を絡ませている状態では、なにも考えられない。  ただ切なくて、苦しくてやり切れなくて――痛くてたまらなかった。  ジンは俺を悲しそうに見つめ、そして瞳を閉じた。  俺は、じいちゃんじゃない。  それを呪文のように心の中で繰り返し、口づけながらジンを横抱きにした。  そのままジンをベッドに運び、そっと下ろす。 「……随分、洒落た真似をするじゃないか」  横たえられたジンは、少しだけ笑っていた。 「うるさいな。少しは、格好つけさせろよ」  ふてくされながら、ジンに覆いかぶさる。
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