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だけど俺は、子供の頃から毎年のように遊びに来ていたこの古い屋敷が、大好きだった。歴史的建造物のような豪華で古い洋館は、外国の絵本からそのまま飛び出してきたようでワクワクしたし、子供には広すぎる屋敷の中を探検すると、それだけでロールプレイングゲームの主人公の気分を味わえた。
そして何より、洋館には大好きなじいちゃんが待っていた。いつも優しい笑顔だった、明るくて楽しい光雄(みつお)じいちゃんが。
この洋館に去年まで暮らしていた母方のじいちゃんは、たった一人の孫である俺をとても可愛がってくれた。俺はじいちゃんの子供の頃によく似ているらしく、それもじいちゃんには嬉しかったらしい。ただし、俺が知るじいちゃんは頭がきれいに輝いていたので、母親や親戚に似ていると言われても、内心ではあまり嬉しくなかった。
じいちゃんを思い出すと、俺の暗い気持ちは少し軽くなった。
いつも笑顔で、俺にすっごく甘くて優しかったじいちゃんを、俺は大好きだった。母親には絶対叱られるようなイタズラをしても、じいちゃんは一度も俺を叱ったことがない。
俺が訪れるたび、家の裏山や近くの川や田んぼに遊びに連れて行ってくれたのも、都会の遊びしか知らない俺には嬉しくて、じいちゃんと遊ぶのは本当に楽しかった。
そんな大好きなじいちゃんは去年亡くなってしまったが、このオンボロの洋館にはじいちゃんの思い出がたくさん残っている。だから俺は、前よりもっとこの屋敷を好きになったかもしれない。
山の頂上近くにある大きな洋館を目指し、俺は大きく一歩を踏み出した。
俺が暗くなっていたら、じいちゃんはきっと心配するだろう。
じいちゃんの家に到着すると、アーチのある大きな門を潜って、屋敷の南に広がる庭を通って玄関に向かった。大きな屋敷だが、相変わらず田舎特有ののんびりさで、玄関の鍵はかかっていなかった。
無用心だなぁ、と苦笑しながら重い扉を開けると、古い建物特有の匂いと、外よりグッと涼しい空気が一緒に流れてきた。
「こんにちわぁ!」
挨拶するのと、中に入るのはほぼ同時だ。
すると玄関右脇の開け放たれた扉から、ひょこっと人の頭が覗いた。
「いらっしゃい! 暑かったでしょう?」
明るい笑顔で俺を出迎えてくれたのは、母親の妹、景子叔母だった。
「ちょ~暑い! もう死にそう」
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