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ジンはきっと、俺をからかう言葉をなにか探していた。けれどそれは叶わず、目元を濡らしながら両腕を伸ばし、俺を抱き寄せた。
俺は悲しそうなジンを見たくなくて、忙しなくキスしていった。紅い唇に、細い首筋に、滑らかな胸元に――。
俺を誘う、下半身に。
「あぁ……、光也……」
ジンの甘い声が耳に届くたび、俺は突き動かされて下手な愛撫を懸命に与えた。切なさと愛しさがない交ぜになり、俺の愛撫は拙い上に乱暴だった。
「み、つや……。んぁ……」
それでもジンは吐息を漏らし、切なげに体を捩らせた。
ジンに煽られ、欲望を高められ、俺はめちゃくちゃにジンを抱いた。
俺はじいちゃんじゃないんだ。
そう思いながら、それを口にすることは出来ず、もどかしさとやるせなさで頭がおかしくなりそうだった。
ジンが欲しくて――。
欲しくてたまらなかった。
俺が欲しかったのは、ジンだ。
誰の代わりでもない、ジンが欲しかった。
これは恋。
これが恋なんだと気づいたのは、とっくに空が白み始めた東雲の頃、眠りに落ちた瞬間だった。
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