34人が本棚に入れています
本棚に追加
また朝が来た。
どんなに長く感じようと、短く感じようと、夜は明け太陽は昇り、新しい朝がやって来る。
俺はクイーンサイズのベッドに、数時間前まであったはずのぬくもりを探した。
でも俺の隣はすでに冷たく、綿素材のシーツを撫でても、肌触りの良さに心細くなっただけだった。
ジンの姿はすでにない。
昨晩は、いや昨晩も、一晩中ジンを抱いた。
それでも朝になると、彼は消えていた。
ランプの魔法なのか、朝が近づくと俺は否応なく睡魔に捕らわれ、ジンの姿を見失う。
そして目覚めると――彼はいない。
ローチェストの上のランプは錆びつき、輝きを失っている。
俺は気だるい体を何とか起こした。心にポッカリ穴が開く、とはこのことか、とぼんやり考えながら。
ベッドサイドの棚に置きっぱなしの携帯は、着信を知らせてランプが点灯しっぱなしだ。開いて確認すると、母親と景子叔母からの着信が何件もあった。
さすがに連絡しなければまずい、とは思うが電話する気が起きない。というか、なにもする気が起きなかった。
なんでだろう、と考え、すぐに思い当たる。
ジンがいない。
俺は、ジンがいなくて寂しかったのだ。
それから動きの鈍い頭を、北側の窓に向けた。
裏山の緑の合間に、あの十字架が輝いている。
またあの教会に行けば、明仁くんに会えるだろうか。
俺は似たくなかったじいちゃんと同じことを考え、ノロノロと起き上がって出かけるための身支度を整えた。
自分を軽蔑しながらも、明仁くんに、いやジンに会いたい、という思いだけで裏山の教会に向かった。
ハーフパンツのポケットには、あの十字架が入れっぱなしだった。
教会の隣の幼稚園は、今日も人影がなく、静かだ。初めにそちらを覗いたが、幼稚園側の建物は鍵がかかって無人のようだった。
それから教会を訪ねると、教会の正面扉は鍵がかかっておらず、中に入ることができた。 静かに扉を開け、ホールに入る。その奥の聖堂に通じる扉も鍵がかかっていなかった。正面の扉よりさらに静かに開けると、そこには昨日と同じ光景があった。
静粛に祈りを捧げる、姿勢のきれいな後姿。
楚々とした佇まいに、俺は悲しくなった。
会いたい人に会えたというのに、悲しくなって胸が締めつけられた。
明仁くんが、人の気配に振り返る。
どうして悲しいのか、すぐにわかった。
最初のコメントを投稿しよう!