マジック02 恋の十字架

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 また朝が来た。  どんなに長く感じようと、短く感じようと、夜は明け太陽は昇り、新しい朝がやって来る。  俺はクイーンサイズのベッドに、数時間前まであったはずのぬくもりを探した。  でも俺の隣はすでに冷たく、綿素材のシーツを撫でても、肌触りの良さに心細くなっただけだった。    ジンの姿はすでにない。  昨晩は、いや昨晩も、一晩中ジンを抱いた。  それでも朝になると、彼は消えていた。  ランプの魔法なのか、朝が近づくと俺は否応なく睡魔に捕らわれ、ジンの姿を見失う。  そして目覚めると――彼はいない。    ローチェストの上のランプは錆びつき、輝きを失っている。  俺は気だるい体を何とか起こした。心にポッカリ穴が開く、とはこのことか、とぼんやり考えながら。  ベッドサイドの棚に置きっぱなしの携帯は、着信を知らせてランプが点灯しっぱなしだ。開いて確認すると、母親と景子叔母からの着信が何件もあった。  さすがに連絡しなければまずい、とは思うが電話する気が起きない。というか、なにもする気が起きなかった。  なんでだろう、と考え、すぐに思い当たる。  ジンがいない。  俺は、ジンがいなくて寂しかったのだ。  それから動きの鈍い頭を、北側の窓に向けた。  裏山の緑の合間に、あの十字架が輝いている。  またあの教会に行けば、明仁くんに会えるだろうか。  俺は似たくなかったじいちゃんと同じことを考え、ノロノロと起き上がって出かけるための身支度を整えた。  自分を軽蔑しながらも、明仁くんに、いやジンに会いたい、という思いだけで裏山の教会に向かった。  ハーフパンツのポケットには、あの十字架が入れっぱなしだった。  教会の隣の幼稚園は、今日も人影がなく、静かだ。初めにそちらを覗いたが、幼稚園側の建物は鍵がかかって無人のようだった。  それから教会を訪ねると、教会の正面扉は鍵がかかっておらず、中に入ることができた。 静かに扉を開け、ホールに入る。その奥の聖堂に通じる扉も鍵がかかっていなかった。正面の扉よりさらに静かに開けると、そこには昨日と同じ光景があった。  静粛に祈りを捧げる、姿勢のきれいな後姿。  楚々とした佇まいに、俺は悲しくなった。  会いたい人に会えたというのに、悲しくなって胸が締めつけられた。  明仁くんが、人の気配に振り返る。  どうして悲しいのか、すぐにわかった。
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