マジック02 恋の十字架

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 ジンの体はもうほとんど透けてしまって、ジンの向こうの絨毯や、ローチェストが透けて見えるほどだった。 「いやだ……、ジン、行かないで……」 「僕が消えたら、やっと光雄に会えるかな……」  ジンは消えて無くなってしまう直前まで、じいちゃんのことを思っていた。  最期の最期まで、じいちゃんのことを思い続け――逝った。  腕の中から、ジンの姿が消える。  温かな肌も、柔らかい髪も、大きな瞳もアルトの声も、跡形もなく消え去った。  ほんのかすかに残ったのは、甘い花の香り。 「ジン!」  俺は、絨毯に崩れ落ちた。  ジンの甘い残り香も、すぐに消えてしまう。  絨毯に両手をつき、声を上げて泣いた。  泣いても泣いても涙は止まることなく、溢れ続けた。  まだこんなにジンが好きなのに、ジンは消えてしまった。  俺はジンに体を奪われた。けれどジンが奪っていったのは、それだけじゃない。もっと大事な、心も全て奪われたのだ。    初恋だった。    生まれて初めての、身を焦がす恋だった。    ジンは頼んでもいないのに、セックスがどれほど気持ち良いのか教えた。    ジンが俺に教えたのが自堕落な快楽だけだったら、俺はきっとこの夢のような出来事を真夏の夜の夢として、いつか忘れることができただろう。    けれどそうじゃないから、こんなにも苦しい。    ジンは俺に恋を教えた。    心が全部相手に向かい、苦しいほどその人のことで体中がいっぱいになってしまう、本物の恋を――。    苦しくて切なくて悲しくて――。    それでも俺は十七の夏、ジンに出会って最高に幸せだった。
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