マジック03 夏の奇跡

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 明るい日差しが目に痛い。  そして、けたたましく歌う携帯の着信音が、耳に痛い。俺はだるくてしかたない腕を伸ばし、どこかにある携帯を探った。  ちょうど頭の真上で掴まえた携帯電話を、片手で強引に開く。 「……はい?」 『光也! あんたどこにいるのよ?!』  朝一番の大音量は、母親の金切り声だった。 『一体何してるの?!』  う、うるせぇ――。  最初はゲンナリしたが、母親からの電話に出るのは二日ぶりだと思い出し、そう思った自分を反省した。 「……ごめんなさい」 『どこで何してるのかって聞いてるのよ! ずっと電話に出ないで!』  よく聞いてみたら、母親の声は少し涙声のようだった。  俺の反省は深くなった。 「ごめん。じいちゃん家にいるよ」 『嘘おっしゃい! だったらどうしてずっと電話に出なかったのよ?!』 「……怒られるけど、寝ないでゲームしたりしてて、母ちゃんから電話あった時は、大体寝てた」  嘘を吐くのは心苦しかったけれど、本当のことも話せない。 『まあ! あんだけだらしない生活するなって言ったのに! やっぱり景子がいないせいね!』  だが普段の行いが悪いお陰か、母親はあっさり信じた。しかも母親の怒りは、上手い具合に景子叔母に向かってくれた。  いつもはうるさくてウンザリする母親の愚痴も、今日は何だか安心する。泣きすぎたせいか――。 「本当にごめんなさい。今日からは、ちゃんとします」  珍しく素直に母親に従ってみた。  あら、と母親は驚いた。  しかし従順になってみると、逆に母は心配し、具合でも悪いのか、とか、なにかあったのか、と矢継ぎ早に言及してきた。  そして俺は、結局いつもと同じように逆ギレすることになった。 「あ~、もうわかったよ! まだ起きたばっかだから、後でまた電話するから!」  さっきの反省はすっかり忘れ、一方的に電話を切った。母親が俺の名を、ヒステリックに呼んでいたのは無視する。  母のパワーは、やはり見くびれない。  朝からどっと疲れ、クイーンサイズのベッドにもう一度寝転んだ。  広いベッドには、誰もいない。  悲しい確認のため、ローチェストに目を向ける。  じいちゃんの魔法のランプは、昨日までよりもっと錆びつき、古びてしまったようだった。  ランプの精が、消えてしまったせいだろうか。  胸がキュッと痛んだ。  けれどもう、涙は出なかった。
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