マジック03 夏の奇跡

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 俺の胸は、ジンが消えた寂しさでいっぱいなのに、温かい幸福で満たされてもいた。  ジンは、ランプの魔人なんかじゃなかった。  寂しい俺の前に現れた――天使だった。 「天使!」  そこで唐突に思い出した。現実に、裏山の教会で出会った、天使のような少年のことを。  明仁くんのことを思い出し、俺が昨日彼にとった心ない振る舞いも思い出した。  慌ててベッドから飛び降り、昨日着ていたコットンのハーフパンツを探す。それを見つけると、ポケットに手を突っ込んだ。  じいちゃんが仁神父から貰ったという十字架は、罰当たりにもポケットに突っ込まれたままで見つかった。 「やっべぇ……」  この十字架を貸して欲しいと言った、明仁君の悲しげな表情が思い浮かんだ。  いくら失恋の痛手で落ち込んでいたとはいえ、なぜあんなひどいことができたのだろう。おばあさんが危篤だと苦しむ彼に、どうしてあれほどひどい仕打ちができたのか。  俺だって、じいちゃんが亡くなった時は、悲しくて辛かったのに。  激しく後悔し、自己嫌悪に打ちひしがれる。  しかし、まずは立ち上がって着替えた。  落ち込んでいる暇があったら、この十字架を明仁くんに届けたかった。きっと許してもらえないだろうが、最低な自分を謝りたい。  俺は戸締りもろくにしないで、じいちゃん家を飛び出した。
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