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俺の胸は、ジンが消えた寂しさでいっぱいなのに、温かい幸福で満たされてもいた。
ジンは、ランプの魔人なんかじゃなかった。
寂しい俺の前に現れた――天使だった。
「天使!」
そこで唐突に思い出した。現実に、裏山の教会で出会った、天使のような少年のことを。
明仁くんのことを思い出し、俺が昨日彼にとった心ない振る舞いも思い出した。
慌ててベッドから飛び降り、昨日着ていたコットンのハーフパンツを探す。それを見つけると、ポケットに手を突っ込んだ。
じいちゃんが仁神父から貰ったという十字架は、罰当たりにもポケットに突っ込まれたままで見つかった。
「やっべぇ……」
この十字架を貸して欲しいと言った、明仁君の悲しげな表情が思い浮かんだ。
いくら失恋の痛手で落ち込んでいたとはいえ、なぜあんなひどいことができたのだろう。おばあさんが危篤だと苦しむ彼に、どうしてあれほどひどい仕打ちができたのか。
俺だって、じいちゃんが亡くなった時は、悲しくて辛かったのに。
激しく後悔し、自己嫌悪に打ちひしがれる。
しかし、まずは立ち上がって着替えた。
落ち込んでいる暇があったら、この十字架を明仁くんに届けたかった。きっと許してもらえないだろうが、最低な自分を謝りたい。
俺は戸締りもろくにしないで、じいちゃん家を飛び出した。
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