マジック03 夏の奇跡

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 母さんに顔を見せて安心させたい、なんて、まだ口にするには気恥ずかしい年頃だ。  景子叔母は、それから話題を変えてくれた。 婚約者の話、その彼の家族の話、そして京都旅行の話や今後の予定について。  しばらく二人で話していると、玄関チャイムが鳴った。やたら広く、客室も多いじいちゃんの家だが、来客は珍しい。 「宅配便かな?」  景子叔母が応対に行き、あら! と嬉しそうな声がした。  戻ってきた景子叔母は、目を輝かせていた。 「ちょっと光也、あんたいつ明仁くんと友達になったのよ」 「え?」  驚いた俺は、ソファから腰を浮かせた。 「玄関に、明仁くんが来てるわよ」  急いで玄関に駆けつけると、玄関に明仁くんが立っていた。 「こんにちは」  明仁くんは、晴れやかな笑顔だった。 「光也~、上がってもらいなよぉ」  リビングから、景子叔母が声をかけてきた。  しかし俺は、明仁君くん二人で話がしたくて、「出かけてくる!」と景子叔母に返し、明仁くんの希望も聞かず、彼を外に連れ出した。 「ちょっと~!」  景子叔母の声がしたが、それも無視して明仁くんと庭に出て、そのまま門を潜り抜けた。 「……あの、景子先生は?」  門の外に出ると、明仁くんが丸い目で俺に問いかけてきた。 「いいのいいの。ケコちゃ……、叔母さんがいるとゆっくり話せないから、暑いけど、ちょっと歩かない?」  俺の勝手な申し出に、明仁くんは嬉しそうに笑ってくれた。  ぱあっと花が咲いたようだった。  ――ん?    花が咲いたことに疑問を抱きつつ、俺は明仁くんと連れ立って歩き出した。  どこを目指すというのではなかった。ただブラブラと、いくらか日陰の多い方に歩いて行った。  なぜだか彼とは、それで間が持ったのだ。 「この前は、わざわざありがとうございました。家まで十字架届けてもらって」  明るい明仁くんに、俺は嬉しい知らせを期待する。 「やっぱり、ご利益あった?」  ご利益――というのはおかしいか? 「はい。お陰さまでおばあちゃん、一昨日意識が戻って、まだ安心はできないけど、危ない状態は脱しました」  明仁くんは足を止め、肩に下げた上質そうなキャメルのショルダーバッグから、あの十字架を取り出した。 「おばあちゃん、これを見てすっごく喜んでました。お兄さんの……仁さんのものに間違いないって。とても懐かしがってました」
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