マジック03 夏の奇跡

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 とっても嬉しそうに言われ、俺も落ち着きを失った。  まさかまさか――。  明仁くんは大切そうに十字架を握りしめ、恥ずかしそうに、けれど嬉しそうに、口の端が微笑んでいる。  いやいやいやいや――。  自惚れちゃぁいけない。  と、俺は俺に言い聞かせる。  も~~しかして、明仁くんって俺のこと?  などとは、思い違いも甚だしい。  俺は必死で、自分を落ち着けようとした。  しかしその努力は、明仁くんに打ち破られた。 「光也さん、いつまでここにいるんですか?」 「へっ?!」 「あの、あの……もし良かったら、どっか遊びに行きません? 大して面白いところもないけど、え、映画とか……」  明仁くんは緊張なのか少し震え――まるで告白のようだった。  十字架を握った両手を顎の下で組み、両目はぎゅっとつぶられ――。  どうやら、俺の勘違いではないらしい?  俺はしばらく逡巡した。  俺もおそらく、明仁くんと同じぐらいドキドキしていた。明仁くんを可愛いと思ったから、迷った。  俺は、じいちゃんと同じことをしようとしているのか――と怖くなった。  俺の返事を待ち、緊張に押し潰れそうになっている明仁くんを、もう一度ちゃんと見てみる。  ジンにそっくりな顔。同じ声。  それなのに――。 「夏休みいっぱい、いるよ」  今さっき、景子叔母に帰ると言ったばかりなのに、あっさり撤回する。  パッと顔を上げた明仁くんに、俺はできる限りの格好いい顔を見せた――つもりだった。 「どっか連れてってよ」  ちゃんと格好良く言えていたかは、わからない。ちょっと噛んでしまった気もする。  それでも明仁くんは、真夏の太陽より眩しい笑顔を見せてくれた。  俺を心配している母に、心の中で詫びる。  ごめん母ちゃん。俺――年頃だからさ。  俺は明仁くんに携帯番号を教え、明仁くんはまだポケベルしか持っていなかったので、ベル番を聞いた。そして早速明日、二つ隣の駅まで買い物に出かける約束をした。  明仁くんと初めてのデートの約束に、俺は舞い上がった。  明仁くんも楽しそうだった。  だから俺は、確信した。  俺は明仁くんを、ジンの代わりとしてなんか見ていない、と。 「楽しみですね!」  明仁くんの笑顔に、俺も大きく頷く。  とびきり明るい明仁くんの笑顔は、誰にも似てなんかいない。  新しい恋の予感に、胸が高鳴る。
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