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「よう、ジュリア様ー」
「あんたも子守り大変だねぇ」
「こ、子守り……? 私まだ子どもいないですっ」
穏やかな陽射しが差し込む中でジュリアが慌てていると、武族の男女は急に笑い転げた。
ばしばしとジュリアの背中を叩きながら。
「いたたた……え、なんで笑うんですかっ」
頬を染めて必死に反論する少女を見て、彼らはまた笑った。
「あんたの隣にでっかい子どもがいるじゃないか!」と言いながら。
・*.・:☆'.・*.・:★'
「……」
背中が、痛い。
――あれから恰幅の良い男女はむせる程笑い、落ち着いたなら早々に立ち去っていった。
「……背中、熱い」
戦闘種族、武族。
その人にバシバシと叩かれ、痛い筈の背中。
なのに、何故かその痛みが心地よい。
性癖云々ではなく、彼女らが触れた箇所からじんわりと響く熱い痛みに顔が自然と綻ぶ。
武族と神族は本当にひとつになったのだと自覚する瞬間はこういう風にいつも突然やってくる。
例えば、嫌悪感なく話し掛けられた時。
例えば、分け隔てることなく触れてくる手。
考えたらきりが無いけれど、どれも幸せで、大切な瞬間。
「ちょっと……痛いけど」
眉尻を落とし、ジュリアは空に向けて笑った。
この言葉で表しようのない気持ちをどうやって伝えたらいいのだろうか。
いつまでも少年のような無邪気さと、大人の男の情熱を持つ彼に。
――あなたが護ってきた一族は皆、優しくて暖かくて。全部全部、いとおしい。
「ジュリアー」
「!」
今一番逢いたいと思っていた人物からの呼び掛けに、ジュリアは大輪の花がその花弁を開くような満面の笑みを浮かべた。
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