2人が本棚に入れています
本棚に追加
/67ページ
「ルカ……」
振り向けば、顔のあちこちに泥を付けて微笑むルカが立っていた。
「すっごい顔。城下街の補整に行ってたの?」
笑いながらハンカチで拭ってやると、こそばゆいような表情をして身悶えている。
毎日毎日、新しい表情を見せてくれる。
その全部が、たまらなく好き。
……絶対に、秘密だけれど。
「ああ、でもあそこをしっかり補整したらきっとでかい市場になる筈だ。そしたら、この国も少しは豊かになるだろ? だからちょっとくらい泥だらけになったって平気だよ。……ジュリア?」
「ん……なあに?」
ぐいんっと勢いよく顔を覗きこまれ、ジュリアは頬を染めた。
穏やかで、逞しくて、落ち着いた表情。
もう……その顔ズルいんだってば、とはにかむと同じような表情をしてルカは声を上げて笑う。
頬に触れてくる手があまりにも暖かくて、心地よくて、とろりと愛おしさが溢れていく。
ふたりの間に流れるものがすべて、一緒くたに混ざり合ってしまえばいいのに。
やわらかい笑みにとけて、ひとつになってしまいたくなるような感覚。
……もっと、触れていて欲しい。
「ル、カ……?」
「……」
戦いの日々が過ぎ去ったこの日常があまりにも幸せすぎて。
瞳を閉じてルカの暖かな手の感触を味わう。
けれど、何も言わない彼に不安になり瞳を、押し上げた。
.
最初のコメントを投稿しよう!