①もっとさわって?

3/4
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/67ページ
「ルカ……」  振り向けば、顔のあちこちに泥を付けて微笑むルカが立っていた。 「すっごい顔。城下街の補整に行ってたの?」  笑いながらハンカチで拭ってやると、こそばゆいような表情をして身悶えている。  毎日毎日、新しい表情を見せてくれる。  その全部が、たまらなく好き。  ……絶対に、秘密だけれど。 「ああ、でもあそこをしっかり補整したらきっとでかい市場になる筈だ。そしたら、この国も少しは豊かになるだろ? だからちょっとくらい泥だらけになったって平気だよ。……ジュリア?」 「ん……なあに?」  ぐいんっと勢いよく顔を覗きこまれ、ジュリアは頬を染めた。  穏やかで、逞しくて、落ち着いた表情。  もう……その顔ズルいんだってば、とはにかむと同じような表情をしてルカは声を上げて笑う。  頬に触れてくる手があまりにも暖かくて、心地よくて、とろりと愛おしさが溢れていく。  ふたりの間に流れるものがすべて、一緒くたに混ざり合ってしまえばいいのに。  やわらかい笑みにとけて、ひとつになってしまいたくなるような感覚。  ……もっと、触れていて欲しい。 「ル、カ……?」 「……」  戦いの日々が過ぎ去ったこの日常があまりにも幸せすぎて。  瞳を閉じてルカの暖かな手の感触を味わう。  けれど、何も言わない彼に不安になり瞳を、押し上げた。 .
/67ページ

最初のコメントを投稿しよう!