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「ぶふっ……!!」
「なあに?」
突然顔を逸らして吹き出したルカに、ジュリアは首を傾げてその意味を問い掛ける。
けれど彼はただ笑うばかりでまともな言葉になっていない。
「ひっ、くく、ジュリアがな、あんまりかわいくて俺……ぶっ!」
「なあにー?」
ちょいちょいと鏡を指差され、可愛らしい顔を少しだけ歪めて覗き込み、息を飲んだ。
「!? なあにコレぇ~! あ、ルカ! 何逃げてるのよー!」
「ジュリアが俺のこと、すっごい顔とか言うから悪いんだー!」
「もー! ばかぁー!!」
けたけたと笑いながら、ルカは逃げ出した。
置いていかれたジュリアは握り締めた小さな拳をぷるぷると震わせ、遠ざかっていくルカの背中に叫びを投げかけた。
「どうしてくれるのよこの泥まみれの顔ーっ!!」
大きくて、
暖かで、
心地よい、ルカの手。
……泥だらけの、ルカの手。
それに触れられたなら、ジュリアの顔も泥だらけになるのは必然だろう。
「……ばか。こども」
きゅっと握り締めた手を開き辺りを見渡す。
雨上がりの道。
泥なんか、そこら中にある。
「仕返ししてやるーっ!」
ルカがこどもなら、ジュリアもそうだろう。
ルカにさわりたいから。
ルカに、さわって欲しいから。
だから、泥を抱えて追い掛ける。
「覚悟、してね」
Fin.
◇◆◇◆◇
若かりし頃のルカとジュリアのお話でした(*´∀`)
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