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(せめて今よりも前の俺に予知メールが送れればなあ)
そうすれば、幼少期の自分にもっと勉学やコミュニケーション能力磨きに全力を注がせることもできただろう。それか、もしくは“努力なんてしても無駄だ。お前の努力はどんな世界線でも活かされない”などと忠告するだろうか。
どちらにせよ、タキオンデバイスを持っていない過去の自分は予知メールを受け取れないし、そもそもタキオン誕生よりも前に予知メールを送ることは法律で禁止されている。
なぜなら、不用意な予知メールのせいでタキオンが存在しない世界になってしまう可能性もあるからだ。それどころか日本の存亡にもかかわる重大な事件が起こる可能性もある。
つまり、葉山の持つタキオンは今年は、未来からのメールの受け取るだけのレシーバーでしかないのだ。
そして、最近になってタキオンが受け取るメールの内容が徐々に変わってきていた。
『○○産業もダメだった。どうやら俺に幸福になる未来は残されていないらしい。もう、人生を諦めるしかないんじゃないか』
『××をしても何の成果もなし。食い物を買うお金もなくて死にそうだ。こんな目に合うなら、昔の俺よ、そこですっぱり死ぬのもありかもな』
『△△になったが、死にたい……。こんな思いを長くするならば、あのとき死んでおけばよかった』
『□□はダメ。もうどんな道を選んでもダメだ。葉山功という人間はどう足掻いても幸せにはなれない。死ぬのも手かもしれない』
『死ねば、こんな予知メールを気にすることもない』
『死ねば、こんなに辛い思いをする必要もない』
『死ねば、……――』
こんなメールが数日間続いていたのだ。
文面はどんどんと暗くなり、まるで自殺志願者が書いたメールの文章そのものだった。こういったメールを送ってくる未来の葉山も数々の不幸の予知メールを読んできたのだろう。きっと精神状況はギリギリ。
それでもメールを送ってくれるのは、きっと過去の葉山に少しでも幸せになってもらいたいから。
だが、未来の葉山にもついに限界が来たようだった。
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