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人並み以上に中年太りした自分の事を棚に上げてるのは百も承知だけど、こんな人生は嫌だ!
不思議な力。
一生に一回だけ使う事が出来る、“時間を巻き戻す力”。
もっと違う時に使うべきだと気が付いても、それは遅すぎる。
いや。
そもそも、そんな不思議な力に頼った私が間違っていたのかも知れない。
「なぁ、なぁ。左分けの方が男前に見えるかなぁ?」
ガリハゲ旦那は、テカテカと光った顔を私に向けて、私からの優しい言葉を待っている。
「……どっちの分け方でも、かっこいい貴方は最高よ!」
そう言った私の歯は、少しだけ浮いていた。
そっと瞑った瞼の裏には、愛くるしい狸親父旦那の笑顔が輝いていた。
そして、心の中で大声で叫んだ。
(……こんなはずじゃぁ、無かったのに!)
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