幸せの彼方へ

あの日に戻れたら……

風の噂で、私が大失恋した彼が今でも独身で、実は私との思い出を今でも大切に思ってくれているのを知ったのは先月の事。

私がその彼に振られたと思っていたのは勘違いで、ちょとしたスレ違いだった。

デートの時に彼が「手を繋ぎたいと思わない？」と私に手を伸ばした時に、私が「ベトベトするから嫌！」と言ってその手を振りほどいた。

夏の暑い日の事。人一倍汗かきな私は、ベトベトとした自分の手を隠す事で精一杯だった。

でも、そんな私の態度が、その彼を傷付けた。私が彼を嫌っている……そんな風に思ったらしい。その私の一言がきっかけで、私と彼との関係が終わったのだ。

……じゃぁ、あの日に彼の手を取っていれば、私の人生は変わったの？

……あんなに大好きだった彼と一緒に人生を歩いていたならば、今の私はどうなっていたの？

そんな風に思ってしまった私は、その彼とやり直したい気持ちが強くなり、そして、目の前の狸親父旦那との人生を捨てる事を決めたのだ。

……そして、私は、時間を巻き戻す力を使い過去へと戻った。