そして、あの日に戻ったら……

4/5
前へ
/10ページ
次へ
それが、16年も経てば人は変わる。 凛として賢そうに見えた銀縁眼鏡の彼の笑顔は、テカテカの脂性の顔に変わり、脂性のせいで眼鏡は何時もずり落ちている。 スマートなお洒落な細マッチョな体型も、中年になり筋肉がそげ落ちて惨めな細い枝のよう。 そして、あんなにフサフサで天パの髪は、見る影もない。 薄毛を認めたくない気持ちは解るけど、バーコード状態の髪を無理に横分けした髪型は痛々しい。 ……これが私の望んだ人生なんだろうか? ……狸親父旦那との人生の方が、今よりも何倍も楽しかった。 ……私は、こんな人生の為に、大事な大事な“時間を巻き戻す力”を使ってしまったの? 何度考えても、私には全く分からない。 あの狸親父旦那は、確かにお腹が出て太っていて、オナラはするし鼻くそをほじるし。 でも、今のこのガリハゲ旦那よりも、何倍も何倍も優しかった。 ナルシストなガリハゲ旦那は、いつも私からの優しい言葉を要求する。 私にはちっとも優しい言葉を言わないのに。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加