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バン! 会議室のドアが開くと同時に二人は背後にある入口を振り返り見た。間抜けな驚きの表情から徐々に引きつる成司の顔、そして背徳行為をしているのに余裕の笑みを浮かべる理恵子。
「美穂? ま、まあ待てよ。誤解だ」
「誤解ですって? こんな状況証拠をまざまざと見せつけて今さら何を言い逃れようっていうの。しかも会社の会議室だなんて、破廉恥よ! ちょっといつまでつながってんのよ!」
腰を引いた成司はそれをだらりとさせたが、避妊具をつけてはいなかった。その事実は美穂に衝撃を与えた。浮気相手が妊娠したらどうするのか。軽率すぎる成司の行動に美穂は怒りを通り越して呆れた。一時の気の迷いで浮気に走るならまだ可愛い。しかし、この短絡的な行為をする男と結婚して私には未来があるのか……。このまま結婚すればメールのように理恵子は妊娠する。あれは3年後の私からのメッセージなのだ。美穂は確信する。
理恵子はまくれたスカートを下ろし、はだけたブラウスを直す。女の生臭いすえた匂いが鼻を突いた。許せない、許せない。理恵子とはナマでしているなんて。一度もナマでしてもらったことなんてなきのに。婚約者の自分にはきちんと施していたのだから。
突然届いた未来からのメールは悪戯ではなく、神様の思し召しと思わざるを得ない。
「別れて。私と別れて!」
「いや、美穂、だから」
「慰謝料請求するから! じゃあ!」
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