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なんてメッセージを作成すると、バカな事をしていると、少し気恥ずかしくなった。
画面をスクロールしていくと、送信アイコンがあったので、まあいいやとそのままタップ送信した。
暫くすると、オレの記憶に、昔そんな事があったという「事実」が付け加わった。
具体的に言うと、当時、まあ一年前なのだろう、変わった内容のメールを受け、それを読んだが、ただの迷惑メールだと思って、気にもとめなかった。
そのメールこそ紛れもない、たった今送った『未来からのメッセージ』なのだ。
オレには、変えたい過去がある。どうしてもやり直したい今があるのだ。
鬼気迫る眼差しが、スマホの画面に反射してオレを睨んでいた。
視線を少し、そこから外すと、床に倒れた女が目に入る。
その女は動かない。流れ出る血液で、べったりとカーペットを染め抜いて。
『三好遼子と結婚してはいけない。別れろ』
過去アプリを通してメッセージを作成し一年前の自分に送信する。
「これでいい、これでいいんだ」
この過去アプリを本物と認識すると、途端にオレはその結果に対する、過度な期待と不安に落ち着かなくなった。忌々しい現実を払拭すべく、興奮を押し殺し、現状の変化を願った。だが変化はない。今も三好遼子は自分の妻のまま、そこで死んでいる。
すると、思い出した。遼子の事が書いてあった迷惑メールの事を。オレはそれを少し気味悪く思っただけで、メッセージなど信じるわけも無かった。それどころか、オレのアドレスと、遼子との関係を知っている知人の悪戯だろうかと、腹立たしく思ったんだ。
「当たり前だ、こんなメッセージを信じるヤツなどいるものか」
愚痴っぽく、つい声に出してしまった。
「まあ、そりゃそうだな、ハハッ」
オレは、自分の説得に失敗したオレを嘲笑った。
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