不変のディザイア

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三好遼子とは職場の同僚で同じプロジェクトチームになってから関わる事が多くなった。 共通の目的だけではなく、価値観や人となりも分かってくると、彼女といる時、居心地の良さを覚えるようになった。次第に、オレの中で三好遼子の存在は、無視出来ないほど大きくなっていった。 程なくオレは彼女に告白して、それから付き合いが始まったのだ。 「訳の分からんメッセージをうのみにして、恋人と別れる人間なんていてたまるか」 と、誰にでもない、自分に言い聞かせるように、一人呟きながらオレはスマホを操作する。 ロトの当選番号のサイト。 一年前の自分が買える当たりナンバーを調べる。 あった。一千万円位の当選番号を教えて、未来からのメッセージだと信じさせる。まあ金は手切れ金として使ってくれとでも書こうか。 「さあ、過去のオレよ、驚き、そして信じるがいい。この未来からのメッセージを」 オレはまた簡潔な内容のメッセージを作成し、送信ボタンを押した。 また迷惑メールが来た記憶が湧いた。 あの時は、しつこい、ウザいと苛立ったが、しかしその内容は妙にリアルで不気味にも思ったっけな。 これも後付けの記憶なのだろうか。 高額当選金の番号を教えてから三日が経った。 オレにロト当選の記憶などなかった、失敗したのだろうか。 もう一度当たり番号を教えようかと思っていた矢先、突然、思い出したように記憶が現れた。 そ、そうだ、あの時は信じられなかったが、オレはあのメッセージの通りロトくじを買って千二百万円の当選金を手にしたのだった。 大掛かりな嘘かと思った、でもあのメールは、本当に未来からのメッセージなのだと信じざるを得なかった。巨額の銀行預金が、これは現実なのだ、と突きつけてきた。
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