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「ハハハッやった、これで信じたろう」
過去のオレに対して、してやったりとオレは笑った。
その後、高額当選金を手にしたオレは未来からのメッセージに従った。その言葉を流石に信じる事にしたのだ。三好遼子との仲を清算するべく、その金を手切れ金に別れを迫った。
だが、三好遼子は承諾しなかった、そんな金は要らないと言ったのだ。
正直驚いた。ただの恋仲の清算に一千万円を受け取らないだなんて信じられなかった。
彼女は、もし本当に別れたいなら、私が嫌いになったのなら、そう言ってくれれば黙って消えると、静かに泣きながら言った。オレは唖然とした。
阿るように、高額な手切れ金まで用意して、突然別れてくれなどと言い出しても、訳が分からない、信じられない、承諾出来ないと。一千万円よりオレを選んだのだ。
懸念はあった。遼子のオレに対する執着は強い。時折異常とも思える程一途だったが、オレは遼子を抱きしめた。遼子のオレへの愛を強く感じたのだ。金よりオレを選ぶ、何物にも変えられない愛情を。オレも遼子を愛した。ここまでオレを愛してくれる女性は他にいなかったから。
「何やってんだオレは」
オレは過去の自分に対して腹が立った。
そして後悔。あの時は情にほだされて別れることは出来なかった。むしろ愛が深まったと言える、しかし、泣かれても、嫌がられても、別れるべきだった。
「・・どうするか、時間はもう、あまりない」
実に厄介だ。過去なんかすぐ変えられると思っていたのだが。スマホから視線を外し天井を見上げ思考を巡らす。
首を吊り自ら命を絶った遼子が揺れていた。
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