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また一日経過した。
その後オレと遼子の仲はみるみる進展し、当選金は結婚資金と新居にあてる事になった、今更沸々と現れる記憶にオレは焦りだした。
「早くしないと時間切れになる」
代り映えのしない結末と過去のオレに苛立ちを覚え歯軋りをする。どうするか、どうすれば二人を別れさせる事が出来るのか。仕方なくオレは、遼子と別れなければ不幸になる、オレを信じろ、と脅しともとれるメッセージを送った。
また一日経過してオレに記憶が現れた。
当時のオレは、未来からのメッセージを読んでそれを信じても、従う事はせず遼子と別れたりしなかった。
遼子を愛し、どんな不幸も二人一緒なら乗り越えて行けると思ったのだ。
「それじゃダメなんだ・・」
深く溜息をつき、スマホを見つめる。憔悴しきったオレの顔が映っていた。
傍らには蒼白な顔の遼子と、睡眠薬の空箱が多数。
仕方がない、オレは事実を伝える事にした。
心が痛かった。
あの宣告を、よもやオレが自分に言う事になるとは。不憫に思った。
『オレはもうじき死ぬ。病院に行き診察を受けろ』
これで全て分かるだろう。震える指で送信ボタンに触れた。
病室のベッドで横になり、胸の位置でスマホを見ながら回顧する。
オレはまるで物語を読むように、自分の記憶をまさぐる。
殺風景なこの部屋を訪れた者は誰もいない、遼子は一度も見舞いに来る事なく先に逝った。オレはただ死を待つためにこの病室にいる。
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