何もないぼく(54)からの期待

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 ふと気づくと、朝だった。  お日様が顔を出している。スズメが鳴いている。カラスが仲間を呼んでいる。町中が目覚め始める。  ぼくは窓を久しぶりに開けた。立てつけが悪くて嫌な音がしたけど、新鮮な空気を久しぶりに吸った。  五十四歳のぼくの言う通り、勇気を振り絞ってみようか。  一度だけ試してみよう。外の世界が怖いかどうか。  もし怖かったら、もう一度、逃げよう。  窓を閉める。部屋のドアは開ける。  ぼくは一年ぶりに、廊下に出た。  お父さんとお母さんに会ったら、まずは何て言おう。  そんなことを考えながら。  了
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