第1章

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『あの頃の私は、こんな将来になろうとは全く思っていなかった… いきなりのメールで驚いた? 私は2020年、5年後のあなたよ。 あなたがこのメールをちゃんと読んでくれているといいけど。 今日は、あなたにどうしても伝えなければならないことがあってメールしたの。 …と、その前に、 私があなただと信じられるように、あなたの事を詳しく書いてみるわ。 まず、あなたは中野深雪、18歳。 家から徒歩3分の高校に通っている3年生。 その高校にした理由は家から近いから。 朝が弱くて、お母さんに起こしてもらわないと起きられないからね。 同じクラスの山本明香と加藤沙耶ととても仲が良くて、いつも一緒にいる。 彼氏はいないけど、隣のクラスの奥村涼太と実は両片想いかもとか考えちゃってる。 まぁこれぐらいでいいか。 そろそろ本題に入ります。 単刀直入に言うわ。 明後日、12月13日。 あなたの大切な友達、加藤沙耶が亡くなります。 死亡現場は彼女の志望大学の最寄り駅。 電車が来ている時にホームから転落したのが原因だったの。 そこは無人駅で、大学も休みだったから、目撃者はいなかった。 電車の運転手は彼女が自ら飛び降りたのか誰かに突き落とされたのか、何もわからなかった。 遺書はなかったわ。 しかし、受験生だし心身ともに疲れていたのだろう、という警察の判断で、彼女の死は自殺または事故だということになったの。 そして、友人であった私のもとに、これ以上何の情報も入って来なかった。 私には彼女の死が信じられなかったわ。 なぜなら私は、最近の彼女の注意深さと生きることへの意欲を見ていたから。 彼女は亡くなる前日、模擬試験で志望大学で3回連続でA判定を取れたことを私に教えてくれたの。 自信に満ちた様子で、勉強以外での受験への対策をしていたわ。 体調管理、睡眠時間の確保、交通事故への注意…。 そんな彼女が事故でホームから落ちるはずがない。 自殺もありえない。 私は真相を知りたいと思い、友達の山本明香と一緒に調査をし始めたの。 このことが私、つまりあなたの将来を大きく変えてしまうのよ。 今のあなたの夢は叶わないわ。 あなたは刑事となり、彼女の死を調査し、そして、大事件に巻き込まれてしまうの。 この将来を避けること、それが私からあなたへの願い。 どうか、加藤沙耶を死なせないで。 大変なことになるから。 5年後のあなたより』
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