千里眼

1/2
前へ
/2ページ
次へ

千里眼

 世の中には『千里眼』て言葉がある。  意味は、『遠方や将来まで見据える力』。  実は俺には、この千里眼の能力がある。  地球の裏側どころか宇宙の彼方だって見えるし、未来の光景もばっちりだ。当然、誰も信じちゃくれないけど。  子供の頃は必死だった。俺は素直に見えたもののことを口にしているだけなのに、周りは全員嘘つき扱い。親は怒るし友達はいなくなる、まあ散々だ。  それでも、発達した文明のおかげで、地球の裏側の事件もニュースになって流れる時代だから、俺が見たものが事実だと証明されることもしばしば。そうなると、今度はみんな気味悪がって、遠巻きに俺を見るようになった。それがさらに変化して、時には、ただ『見て知った』だけの事件に関与してるんじゃないかと疑われもした。  おいおい。遥か遠い国の事件だぞ。しかもそれが起こったからって、俺の生活がどう変化する訳でもない。なのに、『見えた』が信じられない奴らが、何で『関与』を疑うんだか。  そんなことばかりの人生だったから、人間不信を通り越して、もう、人と何か関わらずに生きたいと思うようになった。というか、生きてることさえ面倒だ。とはいえ、ひっそり自殺するのもなぁ…。  そんな時だった。俺の目に、人生最大の朗報となる現象が見えたのは。  宇宙の彼方から隕石が飛んでくる。凄まじい速度で、何故か地球を目指してくるそれは、人類が気づくころにはもう回避不可能。映画とかで見るような、選ばれし英雄達がロケットごと突っ込んで軌道を逸らす…とかもできない規模。  俺にはばっちり隕石が見えている。将来確実に地球にぶつかることも判る。  どうせ世間に嫌われ切って、生きてる価値なんて俺にはない。でも知った以上、一応人類の危機ってことで、教えてもいいけどね。  こういうのはどこに連絡をすりゃいいんだ?  気象庁? それとも国会? 普通に警察?  よかれと思って電話はしたよ。だけど案の定、誰もまともに聞いちゃくれない。頭のおかしい人扱いか、何かの犯罪予告だと思われただけだった。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加