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走った時にミニスカートの裾が上がるのが気になるようで、深浦がしきりにスカートの裾を引っ張っている。
「仕方がないなあ」
そう言うと、昭久は深浦の肩からずり落ちそうになっているバッグを取り上げ、そのまま深浦の手を掴んだ。
「新田くん!?」
「鞄は俺が持つから、スカートが気になるなら空いてる方の手で押さえるといい。歩きにくいなら俺の手に掴まったままでいいから」
「あ、ありがと」
深浦が昭久の手を控えめにきゅっと握り返した。
同じ男なのに昭久よりも少し小さなその手に握られると、まるで深浦から頼りにされているような気がして、知らず昭久の頬が緩んでしまう。
(これは…………ヤバい、かもしれない)
心の隅っこにある何ともくすぐったい気持ち。
まだおぼろげではっきりとした形を成していないそれへ昭久は無意識にそっと蓋をすると、深浦の手をぎゅっと握って映画館へと足を速めた。
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