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(俺……どうしちゃったんだ?)
幼いころからこれまで、昭久は数々の女の子と付き合ってきた。
くどいようだが昭久は女の子が大好きだ。
女の子はかわいいし、そこにいるだけで場が華やぐし、そして柔らかくていい匂いがする。
もちろん初体験も女の子。
高校一年生の時に付き合っていた彼女との自宅デートでそんな雰囲気になって、という流れでいたしてしまった。
以来、自慢ではないが、常に彼女が途切れたことのない昭久の経験値はかなりのものだ。
だが、さっきのように相手のちょっとした仕草でドキドキしてしまったり、目が離せなかったり、その相手のことばかりを考えてしまうなんていうのは深浦が初めてで、正直昭久自身戸惑っている。
「お待たせしました」
店員がストラップの入った袋をレジカウンターの上に置いた。
「…………」
「あの、お客様?」
ぼけっとしたまま商品を受け取らない昭久に、店員が怪訝な顔をする。
昭久が目の前の店員の顔を見た。
昭久と同じくらいの年齢、多分学生のアルバイトだろう。
ちょっとメイクが濃い目だが、目鼻立ちのはっきりとした美人系だ。
(悪くはないけど、深浦の方がかわいい……)
と、そこまで考えて昭久は目を見開くと慌てて頭を振った。
(今、俺、何を考えた? 深浦の方がかわいい? そんなわけあるはずがない。だって……深浦だぞ?)
もう一度、昭久は店員の方へ顔を向けた。
少々行動が怪しげだが、顔面偏差値の高い昭久に見つめられて悪い気はしないのだろう、店員がにこりと笑う。
「…………かわいいとか、ありえない」
「はい?」
店員の顔が僅かに引きつった。
(最近、横山たちとばかりつるんでいたから俺の感覚が少しおかしくなっていたんだ。やっぱり普段から女の子との交流はもっておかないとダメだな)
「そうだ。だから、かわいく見えてしまったんだな。そんなわけないのに」
ひとり納得し、うんうんと頷く昭久の目の前にストラップの入った袋が差し出された。
「ああ、ありがとう」
ちょっとだけ自分を取り戻した昭久が店員へ特上の笑顔を向けた。
昭久からこの特上の笑顔で微笑みかけられると、大抵の女の子は落ちると言われている。
だが返ってきたのは、昭久の予想に反して店員の冷たい作り笑顔と愛想の欠片もない「ありがとうございました」という言葉だった。
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