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「深浦、お待たせ……深浦?」  買い物を終えた昭久が店の外へ出ると、店頭で待っているはずの深浦の姿がない。  普段とは違う格好をしているし、それにあの深浦が昭久にひと言もなしに帰ってしまうとは思えない。  ひとりでどこへ行ってしまったのだろうかと昭久は左右を見渡した。 「深浦?」  さっき深浦が一生懸命に見ていたラックの陰に、見覚えのある淡いクリーム色のコートの裾が見えた。  だが見えたのは深浦の姿だけではなくて、昭久と同じくらいの年頃の男が三人、深浦を取り囲んでいる。 「ねえ、彼女ひとり?」 「俺たち男ばっかでつまんなくてさあ、一緒に遊びに行こうよ」 「………………」 「名前は? なんていうの?」 「………………」  ガラの悪い男たちではなさそうだが、見ず知らずの人間に囲まれ、かわるがわる話かけられて、人見知りなところのある深浦はすっかり怯えてしまっていた。  喋ると男だとバレてしまうのを恐れてか、話しかけられても俯いたまま首を竦めてただふるふると頭を横に振るだけだ。 (おいおい、ナンパ? マジかよ……てか、あいつら深浦が男だと気づいてないのか?)  そうしている間にも、言い寄っている男たちが深浦へ詰め寄った。  深浦も後退るが、三人から追い詰められ、とうとう壁に背中をつけてしまった。 「深浦」  大きな声ではなかったが昭久の声が届いたのだろう、おずおずと顔を上げた深浦が昭久の姿を捉えた。  深浦は今にも泣きそうな顔で、胸元をぎゅっと掴んでいる手が小刻みに震えている。 「かーわいい。緊張してるの? 怖がんなくてもいいよー、俺たち悪いやつじゃないから」 「そうそう、ちょっと遊ぼうよっていうだけ……」 「…………やっ」  男の手が深浦の手首を掴んだ。  だが、その手は別の方向から伸びてきた手によって、あっさりと引き離された。 「えっ……ちょ、なんだよ」 「――――なんだよ、だって? それはこっちの台詞なんだけど。あんたらそこで何やってんの?」 「新田くん」  背後から男の手首を掴んだ昭久が、そのまま腕をねじりあげた。  男が痛みに顔を歪める。 「や、やめろ……っ」 「あのさあ、その子、俺の彼女なんだよね。ひとのモノにちょっかいかけといて、やめろ、じゃないでしょ?」  昭久がにこりと笑った。
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