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 翌週末の日曜日。  横山から指定された駅前の時計塔の前で、これまた横山から指定された時間に、昭久はこれからデートをする相手を待っていた。  デートの相手はもちろんかわいい女の子……ではなくて、深浦だ。  横山のバカげた思いつきに「勝手にやってろ、俺は絶対にデートなんてしないからな」と七回目のミーティングの時に、昭久は横山と深浦の二人にはっきり伝えた。  だがその時「やっぱりダメなんだ……」と、うるうると潤ませた瞳で深浦から見つめられ、昭久はうっかり「行く」と首を縦に振ってしまったのだ。 「あれだよな、捨てられた子犬。あれを無視するのは俺には無理だわ」  足元へ視線を落とし、昭久はゆっくりと息を吐いた。  あたりはすっかり冬の様相を呈していて、昭久の吐く息も白い。 「寒い。あいつら俺をいつまで待たせる気だ? もう待ち合わせの時間はとっくに過ぎてるだろ」  時計塔の時間は十時十五分。  待ち合わせに指定された時間をもう十五分も過ぎている。  嫌々なはずなのに、なぜか待ち合わせ時間よりもかなり早めに来てしまった昭久は、この寒空の下、デート相手の男のことをすでに一時間近く待っている。 「マジ寒い。遅れるなら連絡くらいしろよ……」 「………………あの」 (また逆ナンか?)  深浦を待っている間に何人かのお姉さま方から昭久は声をかけられていた。  もちろんすべてのお姉さま方に「待ち合わせしてるから」とお断りをしたが、こんなに待たされるなら素敵なお姉さまとお茶でもして時間を潰せばよかった。 「………………あの」  寒いし、横山たちには待たされるし、もういいやと半分投げやりな気分で、お姉さんのお誘いに乗ってしまおうと昭久が顔を上げた。 「ごめん……お、遅く、なっちゃった」 「………………」 「えっと、横山くんが、女の子は待ち合わせ時間には遅れて行くものだって言うから。あの、待った?」 「………………いいや。今来たとこ」 「新田くん?」 「………………お前、深浦?」 「うん。そうだけど」  唖然と目を瞠る昭久の目の前には、もじもじと俯き加減の「かわいい女の子な」深浦がいた。
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