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 淡いクリーム色のふんわりとしたショートコートにミニスカート姿が、スレンダーな深浦のスタイルをとてもよく引きたてている。  それにいつもの寝癖スタイルは、絵画に出てくる天使のようにくるんと巻かれた髪型に変わり、柔らかそうな毛先が深浦の小顔をかわいらしく縁どっていた。  そして一番のポイント――――眼鏡が、ない。  くるりとした大きな瞳がじっと昭久のことを見つめている。  眼鏡というフィルターがないだけで、こうも人の印象が変わるものなのか。  硝子玉のような瞳に見つめられているうちに、なんだか居たたまれない気分になった昭久は、堪らず深浦から目を逸らせた。 (…………マジか、マジで深浦。なんだこれ)  どこをどうみても昭久の目の前にいるのは「かわいい女の子」だ。  しかも結構、昭久の好みのタイプでもある。 「新田くん?」 「へっ!? え……ああ、うん」  深浦がこてんと首を傾げた。  顔の下四分の一を隠すように巻かれたはちみつ色のマフラー効果なのか、そんなちょっとした仕草が男なのに妙にハマっている。 「やっぱりおかしい、よね。横山くんは大丈夫だって言ってたけど」  自分の服装を見下ろしながらミニスカートの端っこをつまむ深浦。  スカートとブーツの間の絶対領域に、一瞬、昭久の目が奪われた。 「いやいやいや。違う……違うぞ……」 「え?」 (いくらナチュラルメイクがあいつの肌のきめの細かさを引きたてていようと、華奢な女の子にしかみえない姿かたちが俺の守ってあげたい欲望を刺激しようと、あいつは、あいつは……深浦だ。間違えるな、俺!)  うっかり持っていかれそうになる気持ちを取り戻すべく、こいつは深浦なんだと昭久は自分に言い聞かせた。  もしこれが本物の女の子だったら、一目惚れという言葉で片づけることができるのだろうが、ことはそんな単純なものではない。 「新田くん。あの、やっぱり……ごめん」 「――――え?」 「僕、男なのにおかしいよね、こんな格好。横山くんは大丈夫だって言ってたけど、僕みたいなのと一緒だと、やっぱり恥ずかしいよね」 「深浦」  深浦はもう一度「ごめん」と言うと、コートの袖口をきゅっと握って俯いてしまった。
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