トラブルトレード

普通に安価で買える経歴は、男が青、女が赤のクリアファイルに入っている。
しかし、問題があってお金が払えない状態で得られる経歴は、男が緑、女が黄のクリアファイルに入っている。

ここが第4支部であるということもあって、青と赤のファイルを取り出すことはほとんどない。

蓄えはないが、名前を売られてどうしようもなくなった人間が訪れるケースが多いこの支部では、緑か黄色のクリアファイルを取り出すことが普通である。当然のように黄のクリアファイルを取り出し、その中から数枚の履歴書のような書類を取り出す。

そこには、架空のプロフィールが記載されており、契約が完了した時点で、正規の戸籍として、認可する申請を出す。
ある程度、確立されたシステムではあるので、それはマニュアル化されており、申請を出せば、1日も経たない内に、承認されることもある。

もっとも、それは申請した時間にもよるので、今回のケースでは、ムリかもしれない。
その日に申請を通すには、時間的に微妙であった。

それなら、ゆっくりと時間をかけて、話し合おう。
後々にトラブルをさらに運んできそうなタイプだから。

このときは、そう思っていた。