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宵闇街──その名前を聞いて、どんな場所を思い浮かべるだろうか。
薄暗く、陰気な街、といった印象かもしれない。
しかし、それは、少し違う。
薄暗く、陰気な──この部分は間違えないだろう。
しかし、街ではなく、小さな事務所のような場所である。
小さな事務机が一つ端に置いてあり、真ん中には来客用のソファとローテーブル。
全てが濃紫のような、濃紺のような、例えるならば、夜空のような色をしていた。
こんな小さな事務所が宵闇街と呼ばれるには、いくつか理由がある。
まずは色彩。部屋の色や家具の風合いが、夜空を思わせるような彩りであること。
次に、ここが地下に存在していて、常に薄暗いということ。
そして、この場所が繁華街の地下に存在しているということ。
それらをまとめて、『宵闇街』という名称がついたのではないかと言われている。
しかし、最初に言い出した者がどういう意図でこの名をつけたのかは、はっきりと分かってはいない。
それは噂の域を越えていないものであり、推論でしかないものだからだ。
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