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だが、今の時代を生きる人の中で、宵闇街を知らない者はいないだろう。
知っているだけで関わらない人間は、もちろんいるのだろうが。
お世話になる人間だって、もちろんいる。
必要に迫られて、どうしようもなくなって、世話になる人もいれば。
自分の欲の為に世話になる人もいる。
使い方は、人それぞれなのである。
ここは、人として生きていくために必要なものを売買する場所。
それも、非常に高価なものである。
それは、名前。
経歴、戸籍など、全てを含めた、自分を示すもの。
呼びなれた名前も、友人も、全て。
例え、街中で出会ったとしても、他人のように振る舞わなければならないのだ。
精神的に弱い人ならば、その行為だけで、傷ついてしまう。
しかし、一部のセレブが、自分の立場ではできない娯楽をたしなむために、セカンドネームを望むようになってから、あるビジネスが生まれ、名前の売買は頻繁に行われている。
「ネームトレード」と呼ばれるそれは、自らの名前や経歴と引き換えに、莫大な財産を手に入れることができる。
しかし、自らの名も経歴も捨ててしまうため、新たな名前や経歴も必要となった。
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