トラブルトレード

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「だぁかぁらぁ、お金はないって言ってんでしょっ!?」 金切り声一歩手前のヒステリックな声が宵闇街に響いた。 反響して、さらに大きくなったその声は、キーンという耳鳴りのような不快感を、目の前に座る男に与えている。 「うるさいんで、少しトーンを落としてもらえませんか」 それに辟易したような声を上げ、うんざりとした表情を隠さない。 それが、この宵闇街第4支部の担当者である森崎のよくある行動であった。 ダークスーツに、深い茶の髪の毛。 細目で、細身のフレームのメガネをかけている。 美青年ではあるが、冷たい印象を与える容姿をしているが。 実際は、少し面倒なことが嫌いなだけである。 この第4支部は、トラブルを抱えた人間を扱う部署で。 宵闇街で勤める人間が一番嫌う部署である。 トラブルを抱えた相手が客となれば、いい依頼よりも悪い依頼の方が多いのは必然で。 名前を売られた八つ当たりや、グチ、あるいは逆恨みまで受けなければならない。 名前を買ったのは自分ではないし。 契約を進めたのも自分ではないし。 依頼人との面識はないし。 それなのに、理不尽な対応をされるいいことがない部署なのである。
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