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私には不思議な力が宿っている。
それは過去に遡るという『時間を巻き戻す能力』だ。
例えるならゲームの必需アイテムとも言える『リセットボタン』と同じ。
私はこれまで適当に気の向くままに青春を謳歌してきた。
適当に勉強を頑張って、適当に友達を作って、適当に恋愛して、適当にそこそこの会社に就職する。
でも就職して暫く経ったある日の同窓会で、友人が何気なく漏らした言葉が家に帰宅してもどうしても忘れられなかった。
『社会人になると時間ってほんと限られてくるよね~どうしてもっと学生時代に勉強頑張らなかったんだろうってほんと思うわ。医者と結婚したきゃ自分が医者に、弁護士と結婚したきゃ自分が弁護士にならなきゃいけないんだよ。どんなに理想を追求したって出会わなくちゃ意味ないんだよ』
一理あるなと思った。
たらればを考えたって仕方がないのは分かってる。
でももしもあそこで受験戦争に参加していればなにかが変わっていたかもしれない。
そう思って、無意識に私の口から出た言葉。
これによって世界は一変した。
「リセット」
――
突如視界が歪み、私はハッと我に返って辺りを見渡してみた。
すると、教室内で生徒が和気藹々と授業中にも関わらず談笑している姿が目に映る。
なにこれ……
一体どうなってるの?
そして目線を落として自分が着ている服に着目してみる。
なんと私は懐かしの中学時代に着用していた制服を身に纏っているではないか。
コスプレしているような気分に陥り、慌てて女子トイレに駆け込んだ私が見たものとは……
心なしか若返っているように感じた。
まさか本当に中学生にタイムスリップしちゃったの?
思えば私の知るかつての友人達も若干顔立ちに幼さが残っていたような気がしなくもない。
これが夢だったらぬか喜びもいいところだ。
しかし頬を思いきり引っ張ってみれば案の定激痛が走った。
ということは、本当に、本当に……
そこから私のタイムトラベラーとしての人生がリスタートした。
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