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場面は中学時代に再び戻る。
丁度担任から進路についての紙を渡されているところだった。
この学校に彼はいない。
私が間違っていた。
いくら進学率ナンバーワンと謳っていようとも、それを妨げる人物がいるのではどうしようもない。
なにも偏差値の高い学校はあそこだけではないのだから、そう頑なに拘る必要もない。
寮生活ではないが、中々の実績を誇る女子高を選択した。
彼が通う高校を選ばなければ問題ないのだが、当面男は懲り懲りだった。
あの学校に在席していた頃の頭脳が生きていたのか志望校には苦労することなく楽々と合格。
これで漸く望んでいた勉強漬けの日々を送れると新しい学園生活に期待で胸が一杯だった。
入学して一ヶ月経った頃。
全然話したこともないような派手目の女の子から声を掛けられた。
「ねえねえ、これからうちらと遊びに行かない?」
過去にこの手の連中から酷い目に遭わされた経験から彼女達の誘いを無下には出来ず、私は渋々了承した。
カラオケ館に入り、各々が好きに歌ったり雑談したりして過ごしていた時だ。
「ごめんごめん、ホームルームが長引いちゃってよ~」
「それより、人見くんはちゃんと連れてきたんでしょうね?」
嫌というほど聞き覚えのある名前に、私の心臓が嫌な音を立てた。
「おう、まあな」
最初に顔を見せた男の後ろに立つ彼が姿を現して、一緒に来ていた女の子達がきゃっきゃと頬を赤く染めた。
反対に、私の顔色は極限まで青白くなっていたことだろう。
気のせいだろうか。
彼と目が合ったような気がした。
「はじめまして」
物腰柔らかなその声が誰に向けられたものなのか、この時の私には判断つかなかった。
《おしまい》
何回だって出会っちゃいます…………。
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