リスタート

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「好きなんだ。俺と付き合って欲しい」 え…… こうなることを全く予想していなかったわけではない。 放課後に人気のない空き教室で話があると言われたら誰だってその言葉に期待してしまう。 私はどちらかと言うと早く終わらせて欲しかったけどね。 だけどいざ面と向かって言われると、なんて反応していいか分からない。 「な、なんで私? あまり関わったことなかったよね?」 思わず上擦った声が出た。 そのぐらい私はそこまでモテるタイプではないから。 中学の時も友人の恋を応援している側につくことが殆どだった。 ましてやこんな男女問わず全校生徒の憧れの的であるイケメンに告白されるなんて…… 「始めはたまたま君を見てるだけだった。放課後になるといつも図書室の定位置に座る君に、一生懸命な子なんだなって思って見てた。ねぇ知ってる? 君が座ってるあの場所って周りからは死角になっていて、ある特定の場所以外からは見えないの」 「……特定の場所って……」 「俺の位置からだけが君の存在を捉えることが出来るんだ」 にこりと優しく微笑む彼は確かに皆に好かれるのが納得するほど魅力的だと思った。 「気付いたらいつも君があそこに座るのを待ってた。だから今度は遠くからじゃなくて、隣で君という一人の女性と繋がりを持ちたい。俺の彼女になってくれませんか」 …………。 恐らくその瞳に嘘偽りはないのだろう。 だが生憎と考えを改め直した私にとって、この恋愛こそが蛇足のように思えてならないのだ。 「ごめん。無理」 彼は驚愕した表情で私を見下ろしていた。 断られるとは思っていなかったのかもしれない。 「……理由、聞いてもいいかな」 「貴方のことを好きになれそうにないと思ったから」 「……そ、っか。君の気持ちは分かったよ。教えてくれてありがとう」 思いの外あっさりと引き下がる彼に、イケメンは去り際も格好いいんだなと思った。
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