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――――その翌日。
自分の教室に入る私を迎えたのはクラスメイト達の冷たい視線だった。
結婚するまで勉強一筋で生きていこうと決めた私に友人はいない。
だけど普通に話し掛ければ返して貰えるような人間関係は構築されていると思っていた。
だからこんな風に殺伐とした彼等の態度に動揺を隠し切れなかった。
すると、派手目なグループに所属している一人の女子生徒が私の前に出てきた。
彼女は色濃く引いたアイラインの瞳を鋭く尖らせて私を睨み付けてくる。
「あんたさぁ、人見くんの告白断ったんだって?」
「え……」
「何様なつもりのわけ? 不細工が勘違いしてんじゃないよ」
“人見くん”と聞いて直ぐピンとこなかったが、その後に“告白”と続けば行き着く先は昨日の一件しかない。
私がなにも答えないでいると、彼女の友人らはここぞとばかりに一気に畳み掛けてきた。
「ほんとほんと。人見くん言ってたんだから。向こうも自分と同じ気持ちだと思ってたのにって。それってあんたが思わせ振りな態度とったんじゃないの?」
「なっちがうよ!? だって私彼と話したこともなかったんだよ?」
「どうだか。あんたの言ってることなんか信じらんないし」
「人見くんかわいそう……」
ちょっと待って。
なんで私が悪いみたいな流れになってるの?
こういう時、クラスメイトと必要最低限のコミュニケーションを取ってこなかったから私の味方につく人は誰もいない。
「あんた前から気に入らなかったんだよね。勉強しか取り柄がないくせにうちらのこと常に見下したような目で見やがって」
「その割りにちゃっかり人見くんにアプローチしてたみたいだけど。計算高い女ってこわぁい」
だからなんでそうなるの。
意味が分からない。
「あ? なんだよその目」
「こいつマジムカつくんだけど。純粋な彼にあんな酷いことしておいて反省してないなんて人として終わってるよね」
何も言ってないのに。
私は誰も見ていない。
己の未来しか見据えていないというのに。
「キモいんだよ根暗ブス。あんたなんかに彼の尊厳は傷付けさせないから」
この日を境に私の人生は転落の一途を辿るハメとなったのだった。
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