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おかしい。
こんなはずじゃなかったのに。
休み時間になると女子トイレに連れていかれ、そこで複数人から殴る蹴るの暴行を加えられた。
時には腕を捲られて煙草の火を押し付けられ、身ぐるみ剥がされて全裸にされたこともあった。
恥ずかしい写真を撮られたので彼女達の言うことを聞かないわけにはいかず、彼女達の前で自慰を強制されたりお金を巻き上げられたこともしばしば。
だけど一番耐えられなくなったのは、教科書やノート等の勉強道具をズタボロに刃物で切り刻まれた時。
なんのために今まで色んなものを犠牲にしてまで頑張ったのか分からなくなってしまった。
元々両親からは寮生活を猛反対されていた為に今更泣き言を漏らすこともできない。
途方に暮れて、今日一日の出来事を日誌に書き記していた。
ちなみにもう一人いた日直の女の子は巻き添えを恐れて先に帰った。
私は止まったペンをぼんやりと見つめ、苛められていることを正直に書いてやりたい思いにかられる。
だけどそんなことしたら私のこれからの学園生活が破綻になるだけでなく、大学入試にも影響が及ぶかもしれない。
そう考えると為す術はなく、このまま卒業するまでずっと我慢し続けるしかないのかと絶望した。
まさにそんな時だった。
教室の扉が開き、一人の男子生徒が遠慮のない足取りで入ってきた。
「女子ってえげつないこと考えるよね」
「人見くん……」
「最近君の姿をあの場所で見かけなくてね、どうしたのかなと思って来ちゃった」
あんたがそれを言うか。
元はと言えばあんたが私に告白しなければこんなことにはならなかった。
「あーあ、酷い顔。瞼が赤く腫れてる。もしかして強く擦った?」
「……貴方には関係ないでしょ」
「そうでもないよ。俺、振られちゃったけど今でも君のこと好きなんだ。もしも俺と付き合ってくれたら、こんなくだらない茶番今すぐにでも終わらせてあげる」
悪くない話だと思うけど、と綺麗に微笑む彼はまるで毒を根っこに潜めたトリカブトのように思えた。
「….…やっぱり、貴方が彼女逹を誘導したのね。最低」
「俺はなにもしてないよ。ただ、あまりのショックに失恋した事実をあの子らに話しただけ」
「…………、」
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