リスタート

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彼と交際を始めた翌日から、それは瞬く間に噂となって学校全体に知れ渡った。 想像していたよりも周りの人達は良心的で、温かく私達の関係を祝福してくれた。 私を苛めていたリーダー格の女からも「人見くんの選んだ人ならうちらは応援するよ」と全くもって嬉しくない言葉を掛けられる始末だ。 とは言え、私は既に彼から嫌われる手筈を整えている。 それは、重たくて嫉妬深い女になりきること。 いつの時代も度を越えたヤキモチは女の価値を下げてくれる。 浮気はNG。 私にそのような相手がいないのもそうだが、これだと別れた時に十中八九私が悪者になる。 同じ嫌われるにしたって、180度意味が変わってくるから却下だ。 だから、とことん面倒臭い女を演じて、彼から振ってくれるのを待つに限る。 「人見くん、さっきの女誰?」 「誰って、ただのクラスメイト。君が気にするほどの相手じゃないよ」 「それでも、女は女だよね。なんか嫌だったんだけど」 「分かった。もう話さないようにするね」 「え……」 「嬉しいな。君がこんな風に妬いてくれるなんて夢みたいだ。これからもしそういうことあったら遠慮なく言って欲しい」 なるほど。 人見くんクラスともなればこの程度の嫉妬は朝飯前というわけか。 リセットする前に付き合っていた恋人からは「お前ってマジでドライな性格してるよな。可愛くねえの」と言われて振られたので、重い女ってのが今一よく分からない。 ひょっとして世の中のアベックはこれが一般的なんだろうか。 だとしたらもっともっと女の嫌な部分を全面的に押し出していかなくちゃ。 『人見くん、今なにしてる?』 ラインアプリを開き、この一文を送った。 私なら鬱陶しくてその日のうちにブロックしてしまいたくなるほどの中身のない内容だ。 すると、1分も満たないうちに返事がきた。 『君のこと考えてた』 返答に困る内容だ。 よっぽど気持ち悪いと罵ってやりたかったが、そこはグッと堪えて『私もだよ』と送信した。 したら、今度は着信で返ってきた。
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