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「だって、どうせ離ればなれになるのに」
俺は切ない気持ちを抑えきれず、力ずくでアキを抱きしめた。耳許で囁く。
「俺にも何か遺して、アキ」
「そんなこと」
言われても。台詞の後半を飲み込むアキ。まだ俺を傷つけたくなくて、どうやってこれを止めさせられるかあれこれ考えあぐねている。
『落ち着かなきゃ。何とかしてこれを切り抜けないと』
アキの内心の声が聞こえる。
『ジュンタさんがわたしを傷つけるはずない。わたしが本心から止めてって頼んだら、ジュンタさんなら絶対止めてくれる』
混じり気のない俺への心からの信頼に胸が痛んだが、とてもじゃないが俺の方も止められる気がしない。アキを傷つけたくない気持ちでは人後に落ちないが、それとこれとは別なんだ。
アキには、ストッパーの外れた男の怖さがまだ今ひとつわかっていない。
それにしてもこれはレイプじゃないか、と考える向きもあろうが(俺も回想しながらそんな気がしてきた)、そこら辺弁解するわけじゃないけど霊の場合実体としての肉体を持っているわけではないので、実際のところ貞操観念的なものはゆるい。俺はその辺はこれでも割と淡白な方なので全然参加して来なかったが、高級霊の連中のなかにはマジか、と思うほど遊び回っている奴もいる。所詮観念としての身体だろ?という考えと、病気やら妊娠やらの諸々の危険がないことが関係しているのかもしれない。
何十年とそういった中に身を置くうちに、生身の人間に較べると俺もそういう感覚に寄っていたのかもしれないと思う。
それに、俺にはもう一つ強みが存在した。アキの思考や感情を読み取れることだ。
俺は丁寧に彼女の身体を探りながら、同時にその心の声に耳を澄ませた。アキの心に恐怖や嫌悪感、俺に対しての拒絶が現れていないか。ほんの少しでもそれらの影が見えたら、どんなに辛くても絶対にやめなければいけない。
「ジュンタさん」
スカートの中に手を入れて彼女の生足を撫で回し、突破口を探る俺にアキは呻くように話しかけた。
「本気で、止めて欲しいってお願いしたら…、止めてくれる?」
「本気なら」
俺はアキの唇に再びキスして、耳許で囁いた。 それから必死に固く閉じられた彼女の脚を何とかこじ開けようと、指の届く限り敏感な場所を容赦なく攻め立てた。
「あっ、や、嫌だ、ジュンタさんっ」
アキの声にそれまでにない動揺が混じる。彼女の思考のなかに、微かに快楽の感覚が感じられた。
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