ジュンタくんのちょっとクズな話

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「いや、だから、途中までだったから…、さ」 ついしどろもどろになるが、思えば平然と答えてさえいればどうってことない会話だったのだ。単に、女の子と途中までしたけど、あの感じだと最後までできるね、と言ってるに過ぎない。 途中までした相手が誰かってことが重要だ、って感じさせさえしなければ。 「…ジュンタ」 気がつくと、斜め前に座っているチサトがじっとこっちを見ている。ヤバい。 何か感づいた。 雑に胡座をかいたロングスカートの下の脚を立膝にして、ゆっくりとこちらに半身を乗り出す。俺の目から視線を逸らさず、静かな声で尋ねてくる。 「怒らないから言ってごらん。その時の相手って、誰だったのかな?」 怖い怖いコワい。絶対既にもう半分くらい怒ってるじゃん! 俺まだ何も言ってないのに! 「いや本当に…、お前の」 「知ってる子かな?…知ってる子のことだね、多分」 何でここでしらっと嘘がつけないのか、俺。さあ言え、『それはチサトの知らない子です』って! 「…ジュンタくん、本当はちょっと話したい気持ちもあるんじゃない」 チサトが猫撫で声で、嫌なところを突いてくる。 「そう言えば、アキが行っちゃってからこの何カ月か、ゆっくり俺たち話もしてないよね。彼女のこと誰かと話したいなぁとか、そんな気にならない?あの子の話、聞いてあげられるの俺だけだよ?アキのことよく知ってる相手に、しみじみとあったことを全部洗いざらい話したくならない?」 悪魔の囁きだ。聞き入れてはならない。俺は耳を塞いだ。 「俺もアキのこと、大好きだったなぁ。俺はさ、恋愛中枢死にまくってるからそんな気には全然ならなかったけど。まぁ健全な男ならふらっとは来るよね。可愛かったもんな。気持ちはわかるよ、ジュンタくん」 声が親身に聞こえてくる。そう、アキはあの時も本当に可愛かった。あんな風に終わったのに、今思い出しても身体がぎゅんとなる。アキの声。アキの身体。…ああ、やっぱりつらい。 「…アキ…」 思わず声が出る。頭を抱える俺の背中をポンポン、と励ますように軽く叩いた。 「そうそう。誰にも言えないでいたこと、吐き出しちゃいなよ。俺が聞いてあげるからさ」 それから俺の耳許でゆっくりと囁く。 「…で、お前が途中までした子って、結局誰だったのかな?」 「アキです」 「テメェよくも」 一瞬でチサトの声が激変した。迫力の男声。思わず顔を上げた俺の胸倉を掴んで締め上げる。
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