14人が本棚に入れています
本棚に追加
私は感謝して、彼女の眼を見た。それは天使と同じ、ガラス玉の眼だった。
(彼を押してトラックに轢き殺させるはずだったのに。今度こそは──)
私は三つ目の願いが叶ったのを知った。それは私を道路に突き飛ばした、彼女の心を読んだ声だった。
──バスに轢かれて瀕死の私は、薄れる意識のなかで天使と彼女の会話を聞いた。
「これで彼に掛けた多額の保険金が入るから、それで報酬を払うわ」
「ご契約完了ですね。またのご贔屓をと言いたいのですが、人を殺したあなたはもう天国には行けません。
従って、天国では再びお取引が叶いませんが、ご安心ください」
「あら、何かしら?」
「天使はアフターサービスも万全ですわ。わたくし時間外に、地獄にも出張サービスをしておりますの。
どうぞご用命の際は、いつでもお呼びください」
そう言って、天使がニッコリと笑った。それが私が見た、この世で最期の光景だった。
最初のコメントを投稿しよう!