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運転席で、手際よくアクセルを入れる息子は、ずいぶん堅苦しいスーツ姿。
まだ新品のスーツを着慣れてなくて、馬子にも衣装といった感じだけれど、それでも眩しく輝いて見えた。
「母さん、ナビ入力してくれる?」
「ああ、ごめんなさいね」
あの人の面影があるスーツ姿だからだろうか。ぼうっとしていて、そんなことも忘れてしまっていた。目的地へのナビ入力。
息子が車を発進させた。
行き先は、ある写真館。
今日は、息子のささやかな晴れ舞台。
―――成人記念の、写真撮影の日なのであった。
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