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―――あの人が亡くなったのは、今から十五年も前の話。
列車事故に、私ともども、巻き込まれた。
その時の光景を思い出すたびに、今でも涙が零れてしまう。
あの馬鹿亭主は、私をかばって、ひしゃげた鉄板に押しつぶされてしまった。泣く私に、「お前が居なければ龍太郎も真奈も生きていけないだろうが!」と怒声を張り上げたあの馬鹿亭主。
本当に馬鹿だった。
その時、私は、貴方がいなくなっても生きていけないじゃない!と子供っぽく反論したのを記憶している。
結論から言うと、あの人は即死を免れた。
でも、即死の方が、良かったのかも知れないとすら、思う。
その後は一年、後遺症に苦しめられた末に、息を引き取った。
『龍太郎が成人するまでは』
そう言っていたのにも関わらず、ある晩、すっと息を引き取ってしまって。私は泣くしか出来なかった。
そして私が、妙な力に気づいたのも、その頃からだった。
それが―――『時を巻き戻す力』だった。
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